この記事は2013年5月16日に書かれたものです。最新の情報とは異なる可能性があります。ご注意ください。

HMC 22 のエクステンダーだけについてのレビュー

HMC22のレビューですが、2回に分けます。まずは、前半です。届いたロッドをテストしましたが…HMC+が十分にいいロッドで困りました。
現在、テスト用の弓は「INNO MAX + INNO EX POWER 42ポンド+ HMC PLUSのセンター・サイド + CX2 Vバー + ブラックマックス(終売品)エクステンダー」というものですが、このセッティングで十分に振動吸収がなされており、HMC22の良さを理解することが困難です…。
ということで、これまでメーカーの人との話を振り返れば、HMC 22の一番の目的はコンパウンドでも使用できる高い剛性を持つロッド、ライバルはこれまでのイーストンやFIVICSではなく、ドインカーのプラチナムシリーズやB-stingerを想定した設定になっています。
と考えれば、42ポンドの弓では振動吸収能力の違いを感じ取るのが困難かもしれません(ロッドの重さが違うので、シューティング感が違うことは容易にわかります)。
低いポンドでは、HMC+がおすすめなのは明白ですが、低いポンドだけではなく、30ポンド台後半まではHMC+の方がよいと思います。(セットとしての)HMC22が選択肢に入ってくるのは、明らかに40ポンド以上です。
その話はもう少し煮詰めて、コンパウンドでもテストしてから、今度書きます。
ここからはエクステンダーの話です。セットとして…つまり、センター・サイド・エクステンダーでHMC22の良さが分かるのは40ポンド以上ですが、エクステンダーだけであれば、一般的なポンドでもお勧めできます。

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以前、WIN&WINが販売していたエキスパートというハンドルです。構造的にはとても興味深いハンドルでした。今年、HOYTが同じようなコンセプトのハンドルを作っているので、時代を先取りしすぎていたといっていいかもしれません。
*カーボンとアルミの接合部が剥離するというトラブルも抱えていました。
昔のアメリカの資料を読むと、”愛機”という概念があり、それを使って、ターゲット、フィールド、ベア、ハンティング…すべてのことを1本の弓でこなしていました。
そのため、良いハンドルに求められていたのはオールマイティな性能でした。一昔前までのハンドルはスタビライザーなしでもうてるように設計され、あらゆるセッティングで一定の性能が出るようになっています。
しかし、現在では、というよりも、本当に近年ですが、より特化された設計が増えています。ベア用のハンドル(スピギャなど)、ハンティング用のハンドル(WINのRCX-17やHOYTのバッファロー)など、設計を特化することで性能を高めたハンドルが増えています。
2013年にホイットが出したプロコンプエリートはとてもスタビライザーなしでうてるようなモデルではありません。このハンドルは重いセンターと合わせて使用する前提で開発されています。しかし、そもそもユーザーがセンタースタビライザーなしで、このターゲット競技用として販売されている弓を射つことがあるのかと考えれば、そのようなことはまずないと思われるので、スタビライザーなしでもうてる配慮を”しない”事で、ハンドルの性能を引き上げています。実際、今行われているワールドカップでのこの弓のシェアはかなりのものになっています。
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エキスパートハンドル。ほとんどのアーチャーはエクステンダーを使用していますので、エクステンダーを込みで、エクステンダーありきで、ハンドル(弓)というものを考えた時、このデザインはその一つの答えとしてありだと思います。ちなみに、設計としては大変挑戦的ですが、個人的には保守的な設計が好きなので、テスト以外で使用はしませんでした。
記憶が正しければ、この出っ張っている部分は3~3.5インチのエクステンダーに相当します。逆テック構造で、上下からエクステンダー部分をサポートし、振動吸収と左右方向のブレを減少させ、飛び出しがよくなります。まぁ、写真通り、かなり前重心になるのでその面でも飛び出しは抜群でした。
奇抜なデザインだったためか、2年ちょっとで販売が終了してしまいましたが、記憶に残るハンドルの一つです。
このハンドルの設計に限らず、ハンドルからエクステンダーまでは1つの固体(以前な書いたソリッドなフィーリングで)として使用したいというお客様の要望は常にあります。たくさんのアーチェリー用品に出会える立場だからか、終売品にもかかわらず、当店のスタッフでX10スタビライザー(旧モデル)とブラックマックスを使用している人間が一人ずついます…。。
今でも問い合わせが来ることもあります。どちらも、5~6年前には生産が終了しているモデルであるにもかかわらずです。
これらのモデルに続く商品として、HMC22のエクステンダーは期待できるのではないかと思っています。全部HMC22でそろえるのは高ポンドでないと、メリットを実感しづらくても、エクステンダーだけHMC22にすることで、ソリッドなフィーリングを得ることは可能です。
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左はHMC+、右がHMC22です。カタログ値では7%の違いですが、ブッシングを比べるとかなり太いです。
重さですが、
・HMC + 5インチ 68g
・HMC 22 5インチ 86g
*ブラックマックス 5.5インチ 70g
でした。公式にHMC+と比べて、どの程度多くカーボンを使用しているかは公表されていませんが(形から計算すると17%増です)、カーボンの使用量はかなり増えていると思われます。また、重さはロッドのカーボン使用量の増加に伴うものです。
これは、生産が終了した(まだ在庫はあります)HMCとの比較でもわかります。
・5インチエクステンダー(ブッシング + 5インチロッド + ブッシング)
-HMC 100g
-HMC 22 86g
・28インチセンター(ブッシング + 28インチロッド + ブッシング)
-HMC 160g
-HMC 22 177g
ロッドよりもブッシングの重さが大きいエクステンダーではHMCの方が重いですが、ロッドの方がブッシングよりも重くなるセンターではHMC22の方が重いです。発売当時は革新的なスタビライザーだったHMCも、今では、ブッシングばかりが重いロッドになってしまっています…技術の進化恐るべし…。。。
HMC 22をエクステンダーに使うことで、(たぶん2005年あたりから)主流になりつつあるソリッドな感覚を体験することができ、かつ、重さもHMC+比で15gほど、HMCからの乗り換えであれば、逆に軽くなります。
ポンドが低いお客様でトータルでスタビライザーの剛性高くしすぎると、逆に振動が増してしまうことがあります。クラブ等に所属されているのであれば、高性能の剛性の高いスタビライザーを16~20ポンドのウッド・樹脂ハンドルにつけて射って見る事で、どういった現象か知ることができます。ただ、エクステンダーだけ剛性を高くすれば、振動は相対的な柔らかいセンターロッド・サイドロッドに逃げていきますので、さらにその先により柔らかいタンパーがあれば、振動が逆に増えてしまう状態になる可能性はかなり低いです。軽いポンドのお客様には、まず、エクステンダーのみで試してみることをお勧めします。
…本日はここまで、明日、コンパウンドなどでもテストし、センター・サイドについての後半部分書きたいと思います。


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Ryo

(株)JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、コンパウンド競技歴5年、2021年よりターゲットベアボウに転向。リカーブとコンパウンドで全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。次はベアボウでの出場を目指す。

2 thoughts on “HMC 22 のエクステンダーだけについてのレビュー

  1. このソリッドなフィーリングは記事によると、エクステンダーの剛性を上げて、エクステンダー以降のサイドとセンターもしくはダンパーに振動を取らせるというものだと読み取りました。
    そこで、これをhmc22ではなく、他の剛性が高いと言われるフィビックスのフェニックやcex5でも、動揺もしくはそれに類似したフィーリングを得られるものなのでしょうか?

  2. >これをhmc22ではなく、他の剛性が高いと言われるフィビックスのフェニックやcex5でも、動揺もしくはそれに類似したフィーリングを得られるものなのでしょうか?

    フィビックスのフェニックスでも同様の感覚は得られると思いますが、CEX5のエクステンダーはこのグレードの剛性はないです。

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