この記事は2013年1月27日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

ボウストリングの右用/左用

長くなるので記事にしました。コメントの返信です。


> 前回のuukha社訪問記事といい、今回の記事といい、とても興味深く拝見させていただきました。
> (前回は記事を見てux100を試し買いすることにしました)
> ところで、貴店Webショップで販売しているFLEX社のストリングには右用左用の区別はないようですが、製品として左右の区別がないということなのでしょうか。
> 宜しくお願いします。


コメントありがとうございます。まず、記事に書くにあたって、他店のページも確認しました。最大手のS社のネットショップを確認し、自分が知っている限りで一番古いショップも確認しました。どちらも右用と左用の区別はしていません。自分が知っている限りでも、製品で販売しているところはないです。
どの地域でそのような話が流通しているのは存じませんが、以前にもメールにて問い合わせがあったことがあります。しかし、右用/左用という区別は一般的にはありません。
右と左の違いは手が触れる位置だけなので、おそらく、右と左では捻る向きとサービングの巻き方を逆にするというお話だと思いますが、捻る向きに関しては、確かに逆にすべきです。FLEXの製品はほぼ無回転(混合色を除く)で作られていますので、自分に合ったねじりにしてください。弦をねじるのはチューニングの一環ですので、ここでは関係ない話だと思います。
残るサービングですが…まず、サービングの性能は色と太さを別にすると、主には耐久性(アームガードにこすれても切れない)、グリップ(原糸への適切なグリップ)、滑らかさ(スムーズにリリース)、重さ(矢速の向上)です。
以上のすべての要素をあわせもつ完璧な素材は存在しません。そのために、例えば、BCYなら12種類ものサービングを販売しており、用途に合ったものを選択して使うのが一般的です。FLEXの場合EVOシリーズという自社開発のサービングを使用していますし、特注すれば、他社のサービングも使用できます。弊社の場合では8190のセンターサービングのみ、BCYのNo.62XSの0.21を使用しています(*)。
*これはBCYからいきなり8190が発売されたことに伴う措置で、今後FLEXが8190に合うEVOサービングを開発すれば、EVOに戻す予定なので今後もNo.62XSを使用するとは限りません。また、現在テスト中のEVO15(香りつき)がまさに8190にフィットするサービングではないかと思っています。アーカイブや検索でこの記事を読んでいるお客様はお気を付けください。
一般的にノッキングポイントを作るときには、右と左では逆に作ります。これはノッキングポイントの耐久性を高め、解け難くしてくれます。ノッキングポイントの耐久性はどの程度のものかというと、ほとんどのアーチャーは作ったノッキングポイントが壊れることを体験していると思いますが、うまく作っても、練習量をこなしていれば、3か月~半年程度が限界でしょうか。

では、その対策をセンターサービングにいる必要があるのかというと、「適切なサービングであれば」という前提がありますが、現時点でその必要はありません。

適切なサービングとはなにか。センターサービングの好みもあるので、正解はないですが、一般的にはリリースが滑らかになるように、表面が滑らかで抵抗が少ないサービングがお勧めです。タブに力を加えても、弦がタブにグリップせず、自由にタブの中で滑るサービングを選ぶのがいいと思います。それを使ったうえで、自分の好みを探していくのがいいのではないでしょうか。
サービングの向きが逆で、使っていくうちにサービングが緩んでいくのであれば、それは向きが逆だからではなく、サービングの選択を間違えたか(リリース時のタブとの抵抗が大きい)、サービングの巻き方が下手なのか、そのどっちかです。
お客様が左利きのアーチャーで、右巻きの弦を使って、5,000~10,000射程度でサービングが緩んで来たら、向きを気にするべきではありません。サービングの種類を再考すべきです。確かに、同じサービングでも逆に巻けば、多少は緩むまでの期間が長くなると思いますが、それは何も根本的な問題を解決していません。
弦のサービングの右/左はレストダウンのような話です。レストダウンの原因に、ノックを上から押してしまって起きるものがありますが、スーパーレストだと、レストの爪が柔らないので、レストダウンします。これを金属レストで太い爪のものにすることで、レストダウンを防ぐことはできますが、そもそもは、ノックを押してしまうことを止めるべきです。
レストダウンで悩んでいる人に対して、レストを金属に交換すればいいよとアドバイスする人がいたら、そのアドバイスは間違っているとは言えませんが…それは射型の問題を道具でごまかしているにすぎません。アーチェリーをエンジョイしているだけならいい解決法ですが、競技として取り組んでいるなら、そのアドバイスには従うべきではありません。
無分別智じゃありませんが、何の分別も、偏見も、知識もなく、そこに弦があり、たまたまサービングの向きが逆の弦を使い、すぐにサービングが緩んだとしたら、見直すべきはサービングの技術とサービングの選択であり、同じサービング、同じテンションで逆に巻いて、解決しようとするなら、「サービングが緩む」という問題には対処できるかもしれませんが、「アーチェリーの上達」というゴールからは遠ざかっています。


という話をここまで書いてきましたが、思い出せば、昔自分も左用の弦は逆に巻いていたかもしれません。。。。。心当たりありますね…すみません。
プロショップに左利きのお客様が来店され、注文を受けて、その場でもくもくと作業しているとき、「お客様は左利きですから、サービングは普通の弦の逆で巻いたら、さらに緩みにくいですよ」という話し、これは、店員のおまじない・作業しながらも間を持たせるためのトーク、手作りであなただけのための一本を作っていると伝えるためのサービストークです。
文書・テキストで実証データを伴って、利き手に合わせた弦があるという話が存在せずに、口伝いでそのような都市伝説が流通しているのは、おそらく、自分も心当たりがあるようなリップサービスをプロショップ秘伝のノウハウだと勘違いしている人がいるからだと思います…ごめんなさい。
もし、サービングが緩んだら、見直すべきはサービングのテンションとサービングの種類ですし、プロショップでも、サービングが緩んだよと弦を持ち込まれたら、さっさとリップサービスは引き上げ、テンションや種類から原因を考えていきます。けっして、緩んだ原因を「サービングの向き」と決めつけて、ささっと直して終わりにするところはないと思います。
以上結論としては、ストックではなく、お客様の目の前で弦を作らなくてはならない時(15分くらいかかる)の間を持たせるためのありがちな小ネタが勘違いされて、秘伝のノウハウではいい弦は利き手に合わせるものだと転じてしまったのではないかと思います。
まぁ、おまじないの様な意味合いもありますので、気にされるようでしたら、向きをそろえてみるのもいいかもしれません。ただ、少なくとも、プロの間で議論されるような技術的なトピックではありません。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、2018年よりベアボウに挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

4 thoughts on “ボウストリングの右用/左用

  1. SECRET: 0
    PASS: c543b84aa0508c004992afb649837456
    逆は緩むとは聞くものの、実際に緩んだのを見たことがなかったので。
    特に気にする必要はなさそうですね。
    ご返答有り難うございました。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    おまじないの様なものなので、気になる人はいるかもしれませんが、気にすることではないです。もし、サービングが緩むようなことが起きた時には、サービングの向きなど以前に、サービングの種類や巻いた時のテンションの確認を、完成弦であればプロショップに相談することをお勧めします。
    > 逆は緩むとは聞くものの、実際に緩んだのを見たことがなかったので。
    > 特に気にする必要はなさそうですね。
    > ご返答有り難うございました。

  3. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    気になってしまったので横槍を入れさせて頂きます.
    私は左利きならばサービングも逆に巻くべきだと思っています。
    もしその必要がないのなら,そもそも弦を右利きと反対に捻る必要性も無いように思えます.
    弦自体は反対に捻り,サービングは右利きと同じ巻き方でOKな理由は何でしょうか?
    適切なサービングならば右利きと同じ向きに巻いても緩むことは無いかもしれませんが,「ベスト」ではないように思えます.
    もちろんサービングが緩んだ現象に対して,巻く方向を逆にすることで「解決」とするのは違うということはわかります.
    > ただ、少なくとも、プロの間で議論されるような技術的なトピックではありません。
    右利きが9割と言われる世の中では,そもそも議論されにくいトピックなのではないかと推察します.
    例えば,駅の改札や自動販売機のコイン投入口が右側にあることについて,メーカーもほとんど議論に上げていないと思います.
    右利きの人で,ねじとか文字が右利き用にできていることを気にする人はかなり少ないでしょう.
    左利きの人ですら滅多に気にすることはありません.そういうものだと思っているので.
    だからといって,右利きと同じ巻き方でいいというのは短絡的ですし,妥協のようにも思えます.
    深夜につきテンション高めの長文・乱文となってしまったことをお許し下さい.
    ご意見よろしくお願いいいたします.

  4. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    コメントありがとうございます。
    >私は左利きならばサービングも逆に巻くべきだと思っています。
    送っていただいた文書を何度か読みましたが、全体として、ブログの記事の内容(サービングの向きによって性能差はない、緩むなら原因は別にある)に反論・異論を述べているものはないように感じます。
    >右利きが9割と言われる世の中では,そもそも議論されにくいトピックなのではないかと推察します.
    技術的な問題(こうした方がよりグルーピングが向上し、再現性が高まる)以外の問題は、議論されないというよりも、エンジニア(記事のグレゴリオさん)が議論しないだけで、マーケティング部(例えば、ハンドルの色を何種にするかなど)で議論されています。
    例えば、サービングの向きについて、世界中のアーチャーから「弦には右利きと左利きがあるはずだ」という意見が殺到すれば、メーカーとしても技術的な話以前に、マーケティング部主導で、そのような商品を販売すると思います。というか、弊社の様な代理店がさせます。
    しかし、そのような意見をメーカーに出している代理店はありません。だから、議論されていないということです。必要であれば、テクニカルな問題ではなく、マーケティング上の問題として、メーカーに変更されることは可能です。
    >もしその必要がないのなら,そもそも弦を右利きと反対に捻る必要性も無いように思えます.
    >弦自体は反対に捻り,サービングは右利きと同じ巻き方でOKな理由は何でしょうか?
    左利きの方は逆になるのではないかと思うのですが、自分は右利きで、右回りの方がチューニングしやすいです。捩るときの方が力が必要ですが、時計回りの方がやりやすいです。体の構造はみんな同じなので、そういうものだと案内していましたが、逆の方がチューニングしやすいという方もいるかもしれません。
    サービング同様、弦の捻りを反対にするとグルーピングが悪くなるということはありません。
    こんな感じでよろしいですか?
    > 気になってしまったので横槍を入れさせて頂きます.
    >
    > 私は左利きならばサービングも逆に巻くべきだと思っています。
    >
    > もしその必要がないのなら,そもそも弦を右利きと反対に捻る必要性も無いように思えます.
    > 弦自体は反対に捻り,サービングは右利きと同じ巻き方でOKな理由は何でしょうか?
    >
    > 適切なサービングならば右利きと同じ向きに巻いても緩むことは無いかもしれませんが,「ベスト」ではないように思えます.
    > もちろんサービングが緩んだ現象に対して,巻く方向を逆にすることで「解決」とするのは違うということはわかります.
    >
    > > ただ、少なくとも、プロの間で議論されるような技術的なトピックではありません。
    > 右利きが9割と言われる世の中では,そもそも議論されにくいトピックなのではないかと推察します.
    > 例えば,駅の改札や自動販売機のコイン投入口が右側にあることについて,メーカーもほとんど議論に上げていないと思います.
    > 右利きの人で,ねじとか文字が右利き用にできていることを気にする人はかなり少ないでしょう.
    > 左利きの人ですら滅多に気にすることはありません.そういうものだと思っているので.
    > だからといって,右利きと同じ巻き方でいいというのは短絡的ですし,妥協のようにも思えます.
    >
    > 深夜につきテンション高めの長文・乱文となってしまったことをお許し下さい.
    > ご意見よろしくお願いいいたします.

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