この記事は2012年9月16日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

リムの数量化について

コメントの返信記事です。長くなりそうだったので、記事の方にしました。


リムを購入したいと思い、いくつかのサイトやショップを見て回って思ったのですが、ハンドルや矢については重さや硬さなどが具体的に数値化されて表示されていますが、リムについては殆どポンド数以外、なにも表示されていませんでした。

ショップで話を聞いても「このリムは返りが早い」「ちょっとバタつきます」「奥が軽くて引きやすい」と一つも数字が出てきませんでした。例えば「返りの速さ」などは、同じ長さ、スパイン重さの矢を使い、同じ引き尺で同じ実質ポンドに調整したリムで、リリーサーを使って撃った時の初速を計れば、リムそのものの「返りの早さ」の参考値が表示できると思います。

「バタつき」の強弱もリムを固定し、チップ(又はその下の平らな所)に特定のトルクをかけた時のネジレの角度を計測すればある程度の参考値が出せると思うのですが、なんとかならないものでしょうか。
12/09/15 mithi 様


コメントありがとうございます。それでも長くなりますが、話を短くするために、今回はリムの性能評価に限定して話させていただきます。

>ショップで話を聞いても「このリムは返りが早い」「ちょっとバタつきます」「奥が軽くて引きやすい」と一つも
>数字が出てきませんでした。

書いていて記事が長くなったので、エグゼクティブサマリーから書きます。

上のようにとなってしまっている理由は、矢速は評価が難しくある程度結果の操作が可能なので、データはプロショップに存在するものの、きちんとした説明と共に公開しないと悪用されたりお客様が混乱する場合もあり各社取り扱いが慎重。バタつきは数値化できるものの点数との因果関係が不明なので、口頭で伝えるのみ、気になるお客様はリムセーバーを使用すれば、大体改善できるので、数値化はしていない。リムの捩じれ剛性は各社大きな差があるため、手で触っても確認できるので、数値化していない。引き味は細かい点では、ハイトやリムボルトの位置で調整できるので、プロショップでは、普通・柔らかい・硬いの3分類で伝えることが多い。数値化して、F7のウッドはF7のフォームより29インチからの引きでfx曲線の傾きが3%違うとなっても、ハイト・リムボルトなどをちょっといじれば、逆転するので、あまり細かい数値はみんな不意味だと感じている。
ためです。

ただ、まったく数字を出さないと、全然違う事を言って、お客様に合っていない、プロショップが儲かるリムばかりを売りつけようとする人間がいることも確かなので、今後、ある程度の数字は公開していこうかと思っています。

さて、具体的な話はこれ以降に書きました。


数値化についてですが、テストの方法はすでにコンパウンドの世界で確立されています。それについて書きます。返りの速さは「矢速」として、バタつきはリムの動きを「撮影して評価」し、捩じれ剛性は「リムにトルクをかけて評価」します。奥の柔らかさは、「fx曲線」で表示できます。

1.矢速のテストはアメリカのATA規格(AMO)で、「矢の重さ 540gr 60ポンド 引き尺 30インチ」の時の矢速を表示する事になっています。コンパウンドのカタログを見ると、315fpsや358fpsなどの表示があります。

問題点として、なんでも表示することに意味があるわけではありません。例えば、Missionというコンパウンドのメーカーがありますが、ここは一部の弓でしか表示していません。上位競技モデルのラリーは矢速表示していますが、エントリーモデルのメナスというモデルでは表示していません。メナスはそもそも矢速を考えて設計されていないので、競うことに意味がないためです(表示するためには測定に必要な60ポンドモデルを特別に生産して測定する必要がありますが、Missionはそれ無意味だと考えています)。こういった例は多々あります。リカーブで言えば、W&WのINNO EX POWERリム(5万円のリム)がWIN/SFのElite Carbonリム(2万円のリム)よりも、矢速が早いことは間違いないですが、だからと言って、EX POWERの方が良いリムだと言って、みんなに薦めて販売しているわけではないです。きちんと、お客様の要望にあった物を販売するのが仕事ですので、一部のリムでは、そもそも矢速を目的に開発されておらず(3万円以下のリムはだいたいそう)、特に初心者のお客様に数字で語ることで、逆に悪用される(初心者にEX POWERを買わせる)可能性もあります。

次に、ATAでは30インチ60ポンドと言う規格を定めたものの、ATAはHOYTなどの大手が「談合」して、自分たちの良いように、その数字を定めているという主張も存在しています。確かに、なぜ、30インチなのか、実際に最も売れているのは、世界中で見ても、27-28インチで、30インチは決して売れ筋ではありません。ATAが30インチに定めた根拠は自分が知る限りでは、公表されていません。その為に、ATA規格(AMO)とは別に、IBOという別の矢速表示があります。

HOYTは自分たちが作ったATAだけしか表記していないですし、PSEなどは両方の主張に配慮し、ATA/IBOでの矢速を両方表示しています。また、BowtechはATAとIBOどっちでも同じと主張し(そんなはずはないのですが、IBOの方は測定をごまかす事が出来なくもないので、同じになるように調整はできます)、EliteやMissionは基本的にATAで矢速を表記しない状態になり、結局ユーザーの利便性が微妙な状態になっています。

aspeed.jpg

上は、それぞれのメーカーの矢速表示を抜き出したものです。メーカーで矢速を測定しているものの、結局どのモデルが速いのか、分かるでしょうか???…理論を飛び越えた人間しか答えがわからないと思います
HOYT : (A)330
PSE : (A)335 = (I) 327
Mission : (I) 330
Bowtech : (A) 330 = (I) 330
理論的に考えると
1.HOYTの(A)330よりもPSEの(A)335の方が速い
2.PSEの(A)335は(I)の327なので、Missonの(I)330の方が速い
3.しかし、(I)330はBowtechによると、(A)330なので、HOYTと同じ矢速のはず
結論 : MissonとBowtechは、HOYTと同じ矢速だが、HOYTよりも矢速の速いPSEよりも、矢速が速い
…という矛盾した結果に。
この数字を使って、そのメーカーのラインナップの中での評価はできますが、他社との比較は結局できないと思います。
もちろん、プロショップが独自に評価してもいいのですが、その時に、どの基準を採用したかで、結局結果が変わってきます。IBO規格は手心を加えることが出来るし、厳格なATA評価は非現実的です(30インチの60ポンドモデル…国内で使っている選手がいるかどうかも疑わしいスペックです)。
話を戻します。リカーブでも矢速の評価はできると思います。但しどうやるのか、話を簡単にするために、W&WとHOYTで言うと、EX POWERで一番売れているのはM38で、F7ではS38です(フォーミュラー規格の25インチハンドルではサイトが取れない人がかなりいるため、68インチは27インチハンドルとSリムで作る人が多い)。
では、評価するリムをどっちにするのか。また、HOYTのショートの低ポンドリムの出来がひどいのは昔から有名な話です。S32で評価テストをすれば、間違いなくW&Wの圧勝です。逆にロングリム、特にドローレングスが29インチ以上の場合は、HOYTの方が出来が良いので、結果が逆になるかもしれません。
また、F7はHPXと合わせて作られていますが、このハンドルには矢速が出るように設計されています。ハンドルの設計で矢速が出るのであって、リムの性能のおかげではないので、単純に比較すれば、HOYTの方が有利です。
また、HOYTのF7リムはハイトを低く設定するよう指示されています。しかし、ハイトを低く設定することは一般的には矢速の増加を意味するので、ハイトは同じ値に合わせないと不公平です。
EX POWERとF7だけで考えても、難しいです。
例え、某プロショップがリムの評価テストをしたとすると、プロが見ればその前提(ドローレングス・ポンド・リムのサイズ・ハイトなど)だけでも、意識的かどうかはともかく、どのメーカーが勝ちように設定してテストしたな、ということが分かります。経験豊富なプロショップの人間であれば、意中のメーカーが勝つように設定することが可能です。
逆に、そこまでの厳密のものではなく、目安になる程度の数字でいいよと言う考えもあると思いますが、であれば、個人的には公表する意味がないかなと思います。上位のリムでは、各社2%も差がないので。

gprime.jpg

2.バタつきのテストですが、これは有名なのは、G5 PRIME社のテストかと思います。ハイスピードカメラでカムを撮影して、そのバタつきの最大幅を測定しています。
動画は下記のリンクでご覧になれます。
http://www.youtube.com/watch?v=OzasR5L92Mg

ただし、このテストの再現を考えましたが、非常に追試することが困難です。数字を出したとしても、特に特定のメーカーだけを売りたいセールスマンは、いくらでも、言い逃れすることが出来ますし、ぼく自身この結果を見せられても、一番結果の悪いHOYTを売る自信がありますし、実際HOYTは日本で一番売れているコンパウンドボウです。
リカーブで言えば、そもそも、リムのバタつきがどう点数に響くのかイマイチ分かっていません。好みがあるので、リムの説明をするときには伝えますが、バタつきがあるリムは当たらないとは聞いたことがないです。
上の表で言えば、G5が0.4度、HOYか7.9度、なんと20倍もバタつきますが、だからと言って、HOYTの弓は当たらないとは聞きません。むしろ、トップアーチャーに一番使用されている競技用の弓です。バタつきと的中は弦の利き手(*)と同じくらいの都市伝説だと思います。
*左利き用と右利き用の弦があり、あっていない弦を使うと当たらないるという説がありますが、フランジィーリも本の中で触れていますが、そんな実証データは見たことがないです。
3.リムの捩じれ剛性ですが、これはリムチップにレーザーポインタを付けて、トルクレンチでリムチップにトルクをかけ、その時にポインタがどれだけ動いたかで評価できます。

1blimb.jpg

具体的なやり方については、細く硬いリムが売りのBowtechのテスト風景が公開されています。
blimb.jpg
これに関しては、テストしてもいいとは思っていますが、ただ、逆に微妙な差を評価する必要がある矢速と違い、ここまで厳密にしなくても、最上位モデルでも、市場に出ているリムで最もねじれに強いUX100と、HOYTのF7なら、張ってある弓のリムチップを手で捩じってみればわかるくらいの差があり、トルクレンチなど使用しなくても、感覚的に分かるくらい違います。
このデータに関しては、逆に簡単にわかるので、データ化されていない項目です。
4.奥が引きやすいかに関しては、fx曲線で見ることが出来ますが、fx曲線はハイトとティラーとリムボルトの位置に大きな影響を受けます。もちろん、リム単体で持っている曲線がありますが、微妙な部分でそれらの影響を受けるので、精密に測定して「これです」というのは難しいです。

cam_fv.jpg

これに対しても、コンパウンドの世界では評価基準があり、大まかに3種類(ソフト・ミディアム・ハード)に分けています。もちろん、これ以上に例えば、スーパーソフトから、スーパーハードにまで分けることもできますが、実務上、3種類で十分とされていますし、お客様に説明するときでも、3種類で困ることはないです。
記事がかなりに長くなりましたが、最後まで読んでいただありがとうございます。結論は最初に書いたとおりです。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、2018年よりベアボウに挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

2 thoughts on “リムの数量化について

  1. SECRET: 0
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    結局、使用条件がまちまちだから「自分で使ってみないと分からない」ということですよね。
    だったら「自分で使ってみれるようにする」のがベストではないでしょうか?
    展示品を試し引きできますよ程度ではなく、3日くらいレンタルして貰えればそれで解決ですよ。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    記事の方で返信しました。宜しくお願いします。
    http://jparchery.blog62.fc2.com/blog-entry-1116.html
    > 結局、使用条件がまちまちだから「自分で使ってみないと分からない」ということですよね。
    > だったら「自分で使ってみれるようにする」のがベストではないでしょうか?
    >
    > 展示品を試し引きできますよ程度ではなく、3日くらいレンタルして貰えればそれで解決ですよ。

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