この記事は2010年2月12日に書かれたものです。1年以上前の記事は内容が書かれた当時とは異なる可能性がありますのでご注意ください。

サスティナブル:欧米の持続的仕組み

ブログでは思いつくままにいろいろと記事を書いています。自分のためのメモ的な要素もありますが、アーチェリーの流通の話やアーチェリービジネス業界の記事で多くの拍手のいただけるのはちょっと意外です。
NimesやATAで学んだアメリカやヨーロッパのアーチェリービジネスの仕組みについてのまとめを書いてみたいと思います。以前の記事にも書きましたが、日本では小さなアーチェリーショップが(調査によって自分の予想よりは利益を上げていたものの)苦境に立されています。どのような事態になっているかは何度も書きましたが、一番の問題は「サスティナブル:持続的」な仕組みが日本にはないことでしょう。そして、それを整備しようという動きもありません。
今後、アーチェリー業界がどのように動いていくのかは、あちぇ屋も当事者ですが正直わかりません。新しい動きもあれば、激しい抵抗もあります。もちろん、日本人に合った日本の仕組みを作るべきだと思いますが、まぁ、ヨーロッパとアメリカの仕組みを知るのは無駄ではないと思っています。
重要なことは、アーチェリー業界に悪い人がいるとは思っていませんが、しかし、利害が対立する事はあります。その時、「大」が「小」をいじめることが横行していてはいけないということでしょう。
世界、どの国であれ、大きい会社の方が発言力はあります。HOYT(リカーブ部門)やWIN&WINやSAIMCKの売り上げを100とすれば、ヨーロッパの代理店の売り上げは50~100、日本の大手代理店は5~15、日本の一般的なプロショップは1~2程度です。
グローバル弓具メーカーとドメスティックなアーチェリーショップとでは100倍程度売り上げが異なります。

その圧倒的な差に対して…
アメリカでは、小さなプロショップはNABA(National Archery Buyers Association)といった組合を組織することで大手に対抗しています。ATAではメーカーとショップが価格交渉して、取引を行いますが、NABAに参加していれば、ただのバイヤーよりも安い、大手と対抗できるレベルの価格を提示してもえます。(キャバリア,HOYT,EASTON…みんな加入しています)
つまり、小さなプロショップが団結して、大きな組合を作ることで、「大」と「小」ではなく、「大」と「大」となって交渉し、個人のプロショップでも大手と競争できる価格・条件を得ることで、業界のバランスを保っています。
よく言われる言葉を使えば、日本の結果平等に対して、アメリカらしい機会平等をNABAで担保し、その上で競争して消えていくところは自己責任というのがアメリカのアーチェリー業界だという印象です。
ヨーロッパですが、ヨーロッパでは、大手のディストリビュータがいくつか存在します。規模は日本の代理店とは全く異なります。日本ではアーチェリー人口1万人強にすぎない日本にはHOYTの代理店6社も存在しているのに対して、アーチェリー人口が日本をはるかにしのぐフランス・イタリア・スペインなどは各1社ずつです*
ヨーロッパの代理店はメーカーの半分程度の売り上げがありますので、メーカーとほぼ同等の交渉力を得ることができ、かつ、代理店同士が激しい競争をしています。詳しくは書きませんが、EUの中でいちアーチェリーショップとしてフランスの代理店から購入しても、隣のスペインの代理店から購入しても、安いほうから買えばいいわけです。どちらもHOYTの正規代理店ですし、送料も大差はありません。
ヨーロッパでは代理店が競争をして、販売店を一生懸命増やそうとしています。卸価格を少しでも安くしようと大量に仕入れ、大量に購入したショップにはディスカウントサービスしたり、ネットで在庫を見ることができたり、クレジット決済ができたりと小さなアーチェリーショップに対しても、過剰と言えるほどのサービスがあります。ヨーロッパにおいて、HOYTの代理店と名乗っていても、彼らはHOYTというメーカーを代理しているのではなく、小さなショップの代理人としてHOYTと交渉するライセンスを持った卸業者というのが実態です。
日本の代理店について悪く言うことはしませんが、しかし、体力はレベルは確実に違います。たとえば、某ヨーロッパの代理店はG3リムのM36を10ペア以上購入してくれれば、10%割引するといった提案をしてきますが、そもそも、日本のHOYTの代理店のいずれかが一社でG3のM36を10ペア単位で在庫している事はないです…。
ヨーロッパでは当店のような小さなショップは競争の激しい業界の一員というよりも、一顧客として扱われます。アメリカのアーチェリー展示会が業者限定であるのに対して、ヨーロッパの展示会はだれでも参加可能です。ショップは市場でもっとも安い価格を提示してくれた代理店から商品を購入する顧客であり、体力のある大手の代理店がDistributor(卸業者)としてメーカーと交渉するというのがヨーロッパの姿です。
そして、日本には小さなショップをサポートし、かつ、ショップとは利益相反しない卸業者は存在しませんし、大手との機会平等を求めるショップの組合もありません
*日本だけにHOYTの代理店が乱立しているのはそれだけHOYTが日本のYAMAHAをライバル視していたということでしょう。HOYTの技術部門は良い弓を作ることでYAMAHAに勝とうとしていたと思いますが、営業部門は日本のショップがYAMAHAよりもHOYTの弓を売った方が利益が出るモデルを構築する事に力を入れたのでしょう。その名残だと思います。


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Ryo

Ryo

山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、現在はベアボウにも挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

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