SF Archeryから2回目の荷物が入ってきました。
前回の記事でSF製品はテスト中といっていましたが、製品の性能などに関しては、自分の主観よりも、トップ選手の感想などをベースにして、意見をちょっと加える程度にしています。
あちぇ屋がショップとしてテストしているのはメーカーとしての姿勢や納期、製品の個体差などです。性能は良くても、例えばスタビライザーならば、プリントの色が微妙に違っていたり、プリントの位置がずれていたりと、性能に全く関係ないことでも日本市場ではクレームの対象になりますので、アーチェリショップとしてはそこら辺を見ています。
(その結果、納期が気まぐれなELIの製品の取り寄せは受け付けていません)
と話がずれましたが、SF Archeryのハンドルを入荷しました。販売用というよりは、元YAMAHAアーチャー(Forged2を4年使用)として、このハンドルがどんなものか知りたかったからです。
まずはスペック。ロングハンドルで1,241g、グリップはWINACTと同じもので少し細身です。ポンド調節機能もWINACTのものを使用しております。韓国のWIN製でWINの韓国工場で製造しているようです。
そして、競技歴の長い方には言うまでもなく明らかですが、これはどう見ても、YAMAHAのForgedです。SF ArcheryではSF Super Forgedと名付けています。
なぜこんなものがつくられたのでしょうか?
元ネタのForgedを作っていたYAMAHAは日本国内シェア50%以上をほこり、日本のアーチェリー界に多大な貢献をしたアーチェリーメーカーでしたが、海外進出に失敗し、2002年にアーチェリー事業から撤退しました。
その時にアーチェリー製品を製造する機械を韓国のWIN&WIN社に売却をしたのです。売却が行われたのは確か2003年のことだったと記憶していますが、しかし、売却は機械類にとどまり、技術者の移籍はありませんでした(当然ですね…一部上場の日本企業から韓国の中小企業に移籍したい人はいないでしょう)。
機械だけあっても、ノウハウがなければ、いい製品を作ることはできません。
そこで、WIN社はノウハウの部分をフランス人でYAMAHAととても関わりの深かったセバスチャン・フルートに協力を依頼したのです。
セバスチャン・フルートは92年のオリンピックでイオラ(YAMAHAのForgedの一個前のモデル)を使って金メダルを獲得したため、フランス人でありながらに92年以降のYAMAHAの開発に深くかかわった人物です。元YAMAHA勤務の亀井氏の記事によると、当時のYAMAHAはとてつもない金額をかけて彼に特注のハンドルを渡していたそうです。
1:00あたりに出てくるのがセバスチャン・フルート
5:55あたりにForgedが出ています。
5:55あたりにForgedが出ています。
機械の売却から4年、機械とノウハウがそろったところで、韓国人とフランス人の手によって、"YAMAHA"がよみがえったわけです。
それが良いことなのかどうかの価値判断はいたしません。続きはまたの機会に。
追記
読み返してみて、ある技術者の話を思い出しました。自分が研究してきた技術が自社の中で使われなくなっていき、過去のものと考えられた時に中国企業が話があり、中国に休日を使って半年間技術指導に行ったそうです。
自分の技術を外国企業に渡してしまう罪悪感と異国の地であれ自分の温めてきた技術が生き残っていく嬉しさの中で葛藤していたのだとか。YAMAHAの技術者たちは今どんな気持ちなのでしょうか。
ここら辺の話はデジタル匠の誕生~「ものづくり日本」を再生せよ~になかなか良く書かれてました(アーチェリーの話は出てきませんよ)。
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Ryo
山口諒 - JPアーチェリー代表。担当業務はアーチェリー用品の仕入れ。リカーブ競技歴13年、2014年コンパウンドに転向、2018年よりベアボウに挑戦中。リカーブ・コンパウンド両方で全日本ターゲットに何度か出場、最高成績は2位(準優勝)。

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